【1. ザグをデザインするとは?】詳細解説
◆「ザグ(ZAG)」の基本的な考え方
マーケティングやブランディングの世界では、「差別化」は生き残りの鍵です。
しかし、単なるスペックや価格の差ではすぐに模倣されてしまい、競争優位は持続しません。
そこで重要なのが、「競合が右に進んでいるときに、意図的に左に進む」という明確な差別化戦略――これが「ザグ」です。
この発想は、マーティ・ニューメイヤーの著書『ZAG』でも提唱されており、
「世の中に“ZAG”がなければ、あなたのブランドは埋もれてしまう」
と言われています。
◆ザグは単なる「違い」ではない ―「唯一無二」であること
ザグとは「なんとなく違う」ではなく、顧客がすぐに気づくほど明確で、競合が真似できないものである必要があります。
【良いザグの3要素】
- わかりやすい違い(Radical Differentiation)
- 顧客が3秒以内に「他と違う!」と感じる明快さ
- 重要な違い(Relevant)
- 顧客にとって価値がある違い(どうでもいい違いはNG)
- 持続可能な違い(Defensible)
- 簡単に真似されない、または真似する意味がない
◆ザグを見つける5つの問い
ザグをデザインするには、以下のような自問が役立ちます:
- 「私たちは何者か?」
- 業種や商材を超えた存在理由(例:Appleは「創造的な自己表現を支援する企業」)
- 「誰のためにやっているのか?」
- 顧客を細かく定義(年齢層、価値観、行動特性)
- 「誰と戦っているのか?」
- 真の競合とは誰か?(例:マクドナルドの競合は自炊)
- 「どうすれば他と完全に違えるか?」
- 自分にしか言えない主張、自分にしかできない提供価値は何か?
- 「この違いは顧客にとって重要か?」
- 顧客の心に刺さる違いであるかを確認
◆実例で見る「ザグ」
🌱【例1:トムズ・シューズ(TOMS)】
- 他社:機能性や価格を競う
- TOMS:1足売るごとに、発展途上国の子どもに1足寄付(ワン・フォー・ワンモデル)
- → 善意を行動に変えたい消費者に支持され、熱狂的なファンを獲得
🚗【例2:MINI(自動車)】
- 他社:高性能・高級感を競う
- MINI:あえて小さくてカラフルでキビキビ走る「個性派シティカー」
- → 大きな車が当たり前の米国で「小さいこと」がザグになった
◆ザグがもたらす効果
- ブランドの記憶に残りやすくなる
- 価格競争から脱却できる(価値勝負になる)
- 共感・愛着を生む(特定の顧客層との強固な結びつき)
- メディアやSNSで話題になりやすい
◆注意点:間違ったザグの落とし穴
- 奇抜なだけで意味がない違い
- 顧客にとってどうでもいい(例:色だけ変えた製品)
- 一時的な話題性に頼る
- 長期的なブランド価値につながらない
- 社内で理解・共有されていない
- ブランド行動に一貫性がなくなる
まとめ
ザグとは単なる「ちょっと違う」ではなく、
「明確に」「意味のある形で」「永続的に」違うこと。
それは、競合のジグ(ZIG)を見極めた上での戦略的な逆張り行動であり、ブランドの生存戦略でもあります。
もしご希望であれば、貴社の事業内容に合わせて「ザグ発掘ワークシート」のようなものを一緒に作ることも可能です。作成してみましょうか
【2. あなたのビジネスは何か】詳細解説
◆単なる「商品やサービス」ではなく、「役割・価値・意味」を定義する
「私たちは何を売っているのか?」という問いに対して、
多くの企業は「冷凍食品です」「コンサルサービスです」「ソフトウェアです」と答えがちです。
しかし、それは業種名や表面的な提供物に過ぎません。
顧客はモノを買っているのではなく、「それによって得られる体験・変化・問題解決の結果」を買っているのです。
◆価値は顧客の「悩み」「願い」「状況」の中にある
例1)冷凍食品業
- NGな定義:
「うちは冷凍弁当を作って売っています」 - OKな定義:
「忙しい共働き家庭が、健康的で手間のかからない食事を毎日楽しめるようにサポートする会社です」
→ 商品が同じでも、誰に・何のために・どんな価値を提供するかが明確だと、事業の軸がぶれなくなる。
例2)保育施設
- NGな定義:
「子どもを預かって保育します」 - OKな定義:
「働く親が安心して仕事に打ち込めるよう、子どもの成長を専門的に支援する環境を提供する施設です」
◆「What(何を)」より「Why(なぜ)」と「For Whom(誰に)」が重要
企業がやるべきは「商品説明」ではなく、「どのような悩みを、どのような形で解決しているか」の定義です。
フレームワークで考えると:
- 誰の(Who)
- 主な顧客像(性別、年齢、立場、課題、価値観)
- どんな悩みを(Problem)
- 顧客が表に出している悩み/隠れている本音
- どうやって解決し(Solution)
- どのような方法・体験・仕組みで
- どんな変化・結果をもたらすのか(Result)
- 解決されたあとの姿、得られるベネフィット
◆良いビジネス定義の特徴
観点 | 内容 | 例 |
---|---|---|
シンプルか | 小学生でも説明できる言葉 | 「家族との時間を取り戻すための食事サービス」 |
顧客視点か | 「自分たちが売りたいもの」ではなく「相手が欲しがっているもの」 | 「安心して任せられる子ども預かり」 |
行動につながるか | 社内の行動指針や判断軸になる | 「子どもの主体性を育てるために、否定しない声かけをする」 |
◆なぜこれが重要なのか?
- 社員の共通理解が深まる(価値観の共有)
- 顧客にとっての魅力が明確になり、選ばれる理由ができる
- 今後の事業拡大やブランド展開時の基盤になる
◆実際の定義例(業種別)
業種 | 「私たちのビジネス」の再定義例 |
---|---|
農業 | 自然と共生しながら、人々の心と身体を元気にする安心食材の生産 |
福祉 | 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる仕組みをつくる支援業 |
建設 | 安全で快適な空間づくりを通じて、地域の未来を支えるインフラ事業 |
飲食店 | お客様の大切な時間に、思い出と笑顔を添える体験創出業 |
まとめ:自社ビジネスを定義するには
あなたのビジネスとは、「誰かの人生に、どんな意味や変化を与える存在か?」を考えること。
単なる“商品”から、“価値提供”に視点を転換することで、ビジネスの本質が見えてきます。
ご希望であれば、貴社のビジネスについて「Who/Problem/Solution/Result」フレームで一緒に整理することもできます。必要であればお申し付けください。
【3. 目的は何か】詳細解説
(Purpose – ビジネスの「なぜやるのか」)
◆ビジネスにおける「目的」とは?
「目的」とは、ビジネスが存在する根本理由であり、
単なる売上や利益目標を超えた「なぜこの事業をやるのか?」に対する答えです。
利益は企業の「結果」であって、目的ではありません。
目的は、社員や顧客が共感し、行動や選択の指針となる、企業の心臓部のような存在です。
◆なぜ「目的」が重要なのか?
- ぶれない判断軸になる
→ 新規事業・採用・顧客対応など、迷ったときのコンパスになる - 社員のモチベーションの源になる
→ 「給料のため」から「社会的な使命のため」へと動機が高まる - 顧客との感情的な絆をつくる
→ 「この会社を応援したい」「このブランドに共感する」という熱量が生まれる - 長期的ブランドの土台になる
→ 売れる商品ではなく、“支持される企業”をつくる
◆目的と目標の違い(よく混同される)
種別 | 内容 | 例 |
---|---|---|
目的(Purpose) | 存在理由・志 | 「地域に安心を届けるために医療を提供する」 |
目標(Goal) | 達成すべき定量的成果 | 「2025年までに売上10億円を達成」 |
◆良い目的の3要素(Golden Circle理論より)
サイモン・シネックが提唱した「ゴールデン・サークル」に基づいて、良いPurpose(WHY)には以下の3要素があります:
- Why(なぜ)やるのか? ← 最も重要(存在意義)
- How(どうやって)やるのか?(手段・強み)
- What(何を)やっているのか?(製品・サービス)
成功するブランドは「Why」から始める
→ Appleが愛されるのは、ただの「パソコン屋」ではなく、
「常識を疑い、世界を変える手助けをする会社」だから。
◆企業のPurpose事例(有名企業)
企業名 | 目的(Purpose) |
---|---|
スターバックス | 人々の心を豊かにし、活力を与える“サードプレイス”の提供 |
パタゴニア | 環境危機を防ぐためにビジネスを活用する |
トヨタ | 誰もが移動できる自由と可能性を創造するモビリティカンパニー |
ユニリーバ | 持続可能な生活を“当たり前”にするための商品と文化を届ける |
これらの企業は、「何を売るか」ではなく「なぜ存在するか」で選ばれているのです。
◆目的のつくり方 – 実践ステップ
- 原点を振り返る:なぜこの事業を始めたのか?
→ 最初の動機、困っていた誰か、胸を打った出来事 - 自分たちの強みは何か?
→ 他社にはない信念、技術、文化 - 顧客や社会にどんな変化を与えたいか?
→ 5年後・10年後に「私たちがやってよかった」と思える未来 - 一文にする(目的宣言)
→ 社内外に発信できる、わかりやすく強いメッセージにする
◆目的の言語化 例
💼 悪い例(抽象的・ピンと来ない)
「社会に貢献する企業を目指します」
✅ 良い例(明確・感情が動く)
「“もう一度歩きたい”という高齢者の願いに応えるリハビリ機器を、すべての町に届ける」
◆補足:パーパスドリブン経営とは?
「目的」を軸に事業活動を展開する経営を「パーパスドリブン経営」といいます。
単なるCSRではなく、売上・採用・商品開発すべてがこの目的に従って動く企業文化のことです。
まとめ:目的は「事業の魂」である
ビジネスの目的とは、**金銭的利益の外にある、社会や人に対する“変化をもたらす意志”**です。
それを明確に持ち、語り、行動に落とし込むことで、ぶれない軸と共感されるブランドが育ちます。
ご希望であれば、御社の目的策定を一緒に進めるための「目的設計ワーク」もご用意可能です。ご興味ありますか?
【4. 金儲けを超えた企業の根本的な存在理由】
(=Purpose of Existence/存在意義/パーパス)
◆ビジネスは「儲ける」ためにあるのか?
確かに企業は利益を出さなければ存続できません。
しかし、「儲けること」は企業が生きていくための“血液”であって、“目的”ではありません。
この違いが明確でないと、社員も顧客も離れていきます。現代では、単なる合理性や収益性だけでなく、企業の存在理由=社会における意味・貢献が問われる時代です。
◆根本的な存在理由とは何か?
企業の根本的な存在理由とは、「私たちがなぜ社会に必要とされるのか?」「私たちがいなくなったら、誰が困るのか?」という問いへの答えです。
これは、以下の3つの視点で考えると整理しやすくなります:
- 社会に対してどんな価値を届けているか?
- 誰のために存在しているのか?
- その企業でなければ実現できないことは何か?
◆歴史的に見た「存在理由」の重み
もともと企業(company)の語源は「一緒にパンを分け合う仲間」という意味があります。
つまり、企業とは社会的共同体であり、
利益を独占するのではなく、社会の一部として価値を分配し、支える存在であるべきという思想が根底にあります。
◆「存在理由」を持つ企業の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
📌 社会課題に対する明確な立場がある | 環境、教育、地域、医療、格差など、解決すべき課題に正面から向き合う |
📌 行動が一貫している | 言葉だけではなく、事業内容・採用方針・社員育成にも理念が貫かれている |
📌 顧客・社員・社会の「共感」を得ている | 利益ではなく「共鳴」によって選ばれる |
◆事例:存在理由が明確な企業
Patagonia(アウトドア用品)
- 金儲けの目的:商品販売による利益
- 存在理由:「ビジネスを通じて地球を救う」
- → 環境保護に収益の多くを還元、社員はNGO活動も積極的に参加
YKK(ファスナー製造)
- 金儲けの目的:部品製造と販売
- 存在理由:「善の巡環(ぜんのじゅんかん)」=よい行いは巡って社会に還元される
- → 売上よりも品質と信頼を重視した長期的経営
無印良品(小売業)
- 金儲けの目的:商品販売
- 存在理由:「感じ良いくらし」
- → 消費を押し付けない、余白と本質を大切にする生活提案
◆存在理由の強さが企業の未来を決める
- 利益だけを追う企業は短期的に強くても、顧客や社会との関係が脆い
- 存在理由を持つ企業は時間と共にファンが増え、ブランド価値が上がる
これは、Z世代やミレニアル世代が特に「企業の姿勢」や「社会的貢献性」に重きを置く傾向があることから、今後ますます重要になります。
◆存在理由を言語化するヒント
以下の問いに答えることで、自社の存在理由を明確化できます:
- 私たちが存在することで、世の中はどう良くなるのか?
- 何をしているとき、最も誇りを感じるか?
- 私たちがやらないといけない理由は何か?
- 将来、子どもたちに誇れる事業か?
まとめ
企業の「根本的な存在理由」とは、社会に対して何を約束し、どんな未来を一緒に創っていくのかという“志”である。
これがある企業は、顧客から選ばれ、社員に愛され、未来に残る。
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